今回は「世紀末」という言葉について解説します!
早速ですが、「世紀末」は、19世紀末の退廃的なヨーロッパという意味の言葉です。
「世紀末」と聞くと、文明が崩壊し、暴力が支配する世界を想像するかもしれません。
ところが、実際の意味は全く違います。
「世紀末美術は、人間の内面を神話や伝説で表現したのよ」みたいに使うよ!
なぜ、「世紀末」を「世界の終わり」という意味で使うようになったのでしょうか?
この記事では「世紀末」という言葉の詳しい意味や発祥、使われ方などについても深掘りしています。
興味がある方は記事の続きへどうぞ!
世紀末とは?意味は「19世紀末の退廃的なヨーロッパ」
「世紀末」の意味=19世紀末の退廃的なヨーロッパ
世紀末の本来の意味は、「一つの世紀の終わり」です。
世紀は、100年をひと区切りとする年代の単位です。例えば、21世紀は、2001年から2100年までを指します。
しかし、何世紀か明示しない場合の「世紀末」は、19世紀末のヨーロッパの社会や文化が退廃的な様子を見せた時期を指します。
世紀末の発祥は後述しますが、19世紀末のヨーロッパは、生活が豊かになる反面、人々の間に国家間の緊張関係や社会の急激な変化に対する不安が生まれていました。
一方、日本における「世紀末」は、下記のような「世界の終わり」のイメージと混同して使われています。
- 末法思想:仏教における、仏の教えが廃れて悪い時代が来るという悲観的な考え方
- 世も末:「よもすえ」と読む。堕落して救いようもない世の中になったと嘆く言葉
- 北斗の拳:アニメは「世紀末救世主伝説 北斗の拳」。199x年の核戦争によって荒廃した世界が舞台の漫画
- ノストラダムスの大予言:「1999年7の月に人類滅亡の日」が訪れると言われていた
- 地球規模の戦争や災害によって、文明・秩序が壊滅した後の世界が描かれた作品(「風の谷のナウシカ」など)
19世紀末のヨーロッパも、暗く混沌としていましたが、世紀末はあくまでも「世紀の終わり」であり、「世界の終わり」を意味する言葉ではありません。
世紀末の発祥となった19世紀末のヨーロッパの社会や文化について、詳しく見ていきましょう。
「世紀末」のヨーロッパは、どんな状況だったのかな?
世紀末の発祥や元ネタは「19世紀末のヨーロッパの社会や文化」
「世紀末」の元ネタ、発祥=19世紀末のヨーロッパの社会や文化
「世紀末」という言葉は、1886年にパリで上演されて大成功を収めた喜劇「ファン・ド・シクエル(世紀の終わり)」によって広まり、その後、19世紀末のヨーロッパの社会や文化を指すようになりました。
19世紀前半のヨーロッパは、18世紀半ばにイギリスで起きた産業革命が各国に広がり、科学の進歩や都市の発展を目の当たりにした人々は、明るい未来を想像しました。
しかし、世紀末になると、人々は国家間の緊張関係や資本家と労働者の対立を生む資本主義社会に対して、不安を抱くようになりました。
未来への不安は、閉塞感や退廃的な思想となってヨーロッパ全土に広まり、美術や文学という形で表面化しました。
- ギュスターヴ・モロー:「出現」(上記の絵画)
- オディロン・ルドン:「キュクロプス」(絵画)
- ワイルド:『サロメ』(戯曲)
- ボードレール:『悪の華』(詩集)
- ランボー:『地獄の季節』(詩集)
上記の作品は、世紀末美術・世紀末文学とも呼ばれ、退廃的な方向へと進んでいく人間の姿、普段は表に出ることのないさまざまな欲望、科学や機械化への反発を文章や絵画で表現しています。
世紀末のヨーロッパの人々が抱いていた不安は、20世紀前半に起こる二度の大戦という形で的中することになります。
「世紀末」は、ヨーロッパにとって大きな転換期だったんだね。
世紀末の使い方・例文
「世紀末」という言葉を使った例文を見ていきましょう。
使用例①
この絵は神話を題材にしているんだって。
世紀末美術は、人間の内面を神話や伝説で表現したのよ。
使用例②
次の世紀末は2100年。世界はどうなっているのかな?
世紀末は、世界の終わりじゃないよ。
そうなの?何だか勝手に暗い未来を想像してた。
きっと素晴らしい22世紀を迎えるはずだよ!
使用例③
貸してもらった小説、すごくおもしろかった!
この作家は、世紀末の描写が上手いよね。
世紀末の類義語や対義語
世紀末の類義語と対義語についても見ていきましょう!
世紀末の類義語
世紀末の類義語としては下記のものがあります。
終末
物事が最後に行きつくところや終わりという意味です。
環境破壊が進んだらどうなるのかな?
世界は終末に向かっていくだろうね。
世紀末の対義語
世紀末の対義語としては下記のものがあります。
新世紀
新しい世紀、一つの世紀の始まりという意味です。
今日から2001年だね!
新世紀の始まりだ!