今回は「だんだん」という方言について解説します。
「だんだん」とは、「ありがとう」という感謝の気持ちを表す方言です。
標準語の「だんだん(次第に・少しずつ)」とは別の言葉で、ここでは感謝を表す方言の「だんだん」を扱います。

同じ音でも、意味がまったく違うんですね。
主に島根県の出雲地方や、愛媛県の伊予地方で使われます。
この記事では「だんだん」の意味やどこの方言か、由来・語源、使い方、類義語まで深掘りしています。
興味がある方は記事の続きへどうぞ。
だんだんとは?意味は「ありがとう」
「だんだん」の意味=「ありがとう」。感謝の気持ちを伝える方言
だんだんは、人に何かをしてもらったときや、お礼を伝えたいときに使う「ありがとう」を表す言葉です。
「だんだん」だけでもお礼になり、ていねいに言うときは「だんだんね」「だんだんなー」のように使われます。
ここで大切なのが、標準語の「だんだん」との区別です。標準語では「だんだん寒くなる」のように、少しずつ変わっていく様子を表します。感謝を表す方言の「だんだん」とは、まったく別の意味になります。



「だんだんね」と言われたら、「ありがとうね」という意味なんですね。
だんだんはどこの方言?
だんだん=主に島根県(出雲地方)・愛媛県(伊予地方)の方言
だんだんは、山陰の出雲弁と、四国の伊予弁という、はなれた二つの地域で「ありがとう」として使われています。
島根では出雲地方を中心に、地元の人どうしのあいさつとして今も親しまれています。愛媛でも伊予弁の感謝の言葉として知られ、お店の名前などにも使われます。
このほか、鳥取県や宮崎県、熊本県の一部でも使われたと伝えられています。ただし熊本などでは使う範囲がせまく、同じ市内でも隣の町では使わないこともあります。



島根と愛媛で同じ言葉が使われているのは、少し意外ですね。
だんだんの由来・語源
「だんだん」がなぜ「ありがとう」を表すようになったのかには、諸説あります。代表的な説を順に見ていきましょう。
語源①:「重ね重ね」の省略という説
「だんだん(重ね重ね)ありがとう」の後ろが略され、「だんだん」だけで感謝を表すようになったという説
「だんだん」には「重ね重ね」という意味があり、これに「ありがとうございます」が続いていたものが、前半だけ残ったと考えられています。
「重ね重ねありがとうございます」と何度もお礼を言う気持ちが、「だんだん」の一語にこめられている、というわけです。この説は、後藤蔵四郎の『出雲方言考』(1927年)などに見られます。



「重ね重ね」が感謝の言葉に変わったなんて、すてきな成り立ちですね。
語源②:仏教の「断断(だんだん)」からという説
仏教の経典に出る「断断」に由来し、「繰り返すこと」が感謝の極みを表すという説
「だんだん」は、仏教の経典『雑阿含経』に出る「断断(だんだん)」からきている、という見方もあります。「断断」は「幾度も繰り返すこと」を表し、そこから「謝辞の極み」を意味するようになったとされます。
「重ね重ね」説とも通じる、「何度も繰り返す」という発想が根にある説です。



どちらの説も「繰り返す」という気持ちが土台になっているんですね。
語源③:いつ頃から使われているか
「だんだん」は古い辞典類にも記録があり、『島根県方言辞典』(1963年)には「手を重ねて頂戴すること」や「重ね重ね」といった意味が載っています。
京都で使われていた言葉が各地へ広まり、地域によって残ったり消えたりした、という見方もあります。いずれにせよ、断定できる一つの正解はなく、諸説ありとして整理しておくのがよさそうです。



古くから大切に使われてきた言葉なんだね。
だんだんの使い方・例文
「だんだん」を使った会話を見ていきましょう。
お礼を伝える場面なら、日常のいろいろな場で自然に使えます。
使用例① 助けてもらってお礼を言う
荷物を持ってもらった場面です。



重そうだから、こっちの荷物も持つよ。



まあ、だんだんね。(=ありがとうね。)
使用例② お店で品物を受け取る
地元のお店でのやり取りです。



はい、おまけしときましたよ。



だんだん、だんだん。(=ありがとう、ありがとう。)
使用例③ ていねいに感謝を伝える
お世話になった人に、あらたまってお礼を言う場面です。



このたびは、本当にお世話になりました。



こちらこそ、だんだんなー。(=こちらこそ、ありがとうございます。)
だんだんの類義語や対義語
だんだんの類義語と対義語についても見ていきましょう。
だんだんの類義語
「だんだん」は感謝の言葉なので、標準語や他地域の「ありがとう」が類義語にあたります。
ありがとう/感謝します(標準語)
標準語では「ありがとう」「感謝します」が、もっとも近い言い換えです。



「だんだん」=「ありがとう」と覚えておけば安心ですね。
おおきに(関西)/おしょうしな(山形)
関西では「おおきに」、山形の置賜地方では「おしょうしな」が「ありがとう」を表す方言として知られています。



地域ごとに感謝の言葉がちがうのは、おもしろいですね。
きのどくな(富山)
富山などでは「きのどくな」が「ありがとう」の意味で使われます。「気の毒」が、相手に手間をかけて申し訳ないという気持ちから、感謝の言葉に変わったものです。



「気の毒」がお礼になるなんて、驚きですね。
だんだんの対義語
「だんだん」は感謝を表す言葉なので、明確な対義語はありません。
あえて反対の気持ちを表すなら、おわびの言葉である「ごめんなさい」が近い位置にあります。



お礼の言葉だから、対になる言葉はないんだね。
だんだんの豆知識・ちょっといい話
だんだんをもっと深く知れる、ちょっとした小話を紹介します。
NHK朝ドラのタイトルにもなった言葉
「だんだん」は、2008年放送のNHK連続テレビ小説のタイトルにもなりました。
島根県の松江・出雲と京都を主な舞台にした作品で、島根が朝ドラの主な舞台になるのは、この作品が初でした。タイトルの「だんだん」は出雲弁の「ありがとう」からきていて、「産んでくれてありがとう」「育ててくれてありがとう」「あなたに出会えてありがとう」という感謝がテーマです。



方言の「ありがとう」が、ドラマのテーマそのものになっていたんですね。
標準語の「だんだん」とは同じ音の別の言葉
「だんだん」には、感謝の方言と、標準語の「少しずつ」という二つの意味があり、音は同じでも別の言葉です。
「だんだん寒くなる」の「だんだん」は、標準語で時間とともに変わる様子を表します。出雲や伊予の人が「だんだん」と言ったときは、お礼の意味のことが多いので、場面で読み取るのがコツです。



どちらの意味かは、会話の流れで分かりそうですね。
島根と愛媛、はなれた二つの地で生きる言葉
「だんだん」は、山陰の出雲弁と四国の伊予弁という、地図の上ではかなりはなれた地域で、同じ「ありがとう」として使われています。
愛媛では「だんだん」を店名に使うお店もあり、地元の人に大切にされている言葉だとわかります。同じ言葉が遠く離れた土地で根づいているのは、言葉が人とともに旅をしてきた証ともいえます。



同じ言葉が二つの地域で愛されているなんて、ロマンを感じるね。
最後まで読んでいただき、だんだん。「だんだん」が「ありがとう」を表す出雲・伊予の方言だと知っておくと、旅先での会話がもっと楽しくなります。