今回は「やっちゃば」という方言について解説します。
やっちゃば=青物市場・野菜市場のこと

やっちゃばって聞いたことあるけど、どこの言葉なんだろう?
主に東京(江戸)で使われる方言です。
この記事では意味・どこの方言か・由来・使い方・類義語まで深掘りしています。興味がある方は記事の続きへどうぞ。
「やっちゃば」とは?意味は「青物市場・野菜市場」
「やっちゃば」の意味=青物市場・野菜市場のこと
「やっちゃば」とは、野菜や青物(葉物野菜・根菜など)を専門に扱う市場、つまり青物市場のことを指す言葉です。江戸時代から東京近郊で使われてきた表現で、現代でも東京の下町や市場関係者の間で耳にすることがあります。漢字で書けば「やっちゃ場」とも表記されます。



「やっちゃ場」って書くこともあるんですね。江戸から続く言葉だなんて、なんだか趣があります。
「やっちゃば」はどこの方言?
やっちゃば=主に東京(江戸)の方言
「やっちゃば」は主に東京・江戸を中心とした関東圏で使われてきた言葉です。江戸時代には神田・駒込・千住といった市場の周辺でとくによく使われ、市場に出入りする業者や近所の住民にとって日常的な言葉でした。
関西や西日本では「やっちゃば」という呼び方はほとんど使われません。全国的にはあまり通じない言葉ですが、市場や流通の業界では今でも使われることがあります。また、神田市場・千住市場ゆかりの地元では、今も愛着を持って使う人が残っています。



関東以外では通じないんですか?



市場関係者の間では通じることもありますが、一般的には東京以外では聞き慣れない言葉ですね。
「やっちゃば」の由来・語源
「やっちゃば」の語源については複数の説があります。有力とされるものを順に紹介します。
語源①:セリの掛け声「やっちゃやっちゃ」という説(最も有力)
最も広く知られるのは、競り(セリ)の掛け声「やっちゃやっちゃ」に由来するという説です。江戸時代の青物市場では、仲買人たちが「やっちゃやっちゃ」という独特の掛け声をかけながら競りを行っていたとされています。その声が飛び交う「場所」だったことから、「やっちゃ場(やっちゃば)」と呼ばれるようになったという説です。活気あふれる市場の情景が目に浮かぶような語源で、現在でも最も有力な説とされています。



「やっちゃやっちゃ」という掛け声が語源なんて、すごく面白いですね。市場の雰囲気が伝わってきます。
語源②:地名(八辻ヶ原)に由来するという説
もう一つの説として、江戸の地名「神田八辻ヶ原筋違町(やつじがはら)にあった青物茶屋の場所」が縮まって「やっちゃば」になったとする説もあります。「八辻ヶ原(やつじがはら)」が訛って「やっちゃば」になったというものです。ただし、この説は①のセリ掛け声説と比べると支持する声は多くなく、あくまで諸説のひとつとされています。



地名が変化した説もあるんですね。どちらが正しいのか、判断が難しいです。
語源③:江戸三大市場の歴史
「やっちゃば」が根付いた背景には、江戸幕府が整備した三大青物市場の存在があります。千住・神田・駒込の三か所が幕府御用市場として機能し、江戸の食を支えていました。千住の市場は1576年(天正4年)に発祥したとも伝えられ、神田の市場は1657年の明暦の大火後に多くの商人が集まって形成されたとされています。しかし関東大震災(1923年)で市場は大きな打撃を受け、その後復興を経て、1990年には大田区に移転し現在の東京都中央卸売市場大田市場へと姿を変えました。「やっちゃば」という言葉は、そうした長い市場の歴史とともに生き続けてきた言葉です。



千住の市場が1576年発祥とは知りませんでした。400年以上の歴史があるんですね。
「やっちゃば」の使い方・例文
使い方①:市場に買い出しに行くとき
昔の下町では、朝早くに「やっちゃば」へ野菜を仕入れに行くのが日課でした。



今日も朝からやっちゃばに行ってきたよ。いい大根が安く出てたから大量に買ってきた。



やっちゃばって、朝早くから開いてるんですね。鮮度が命ですもんね。
使い方②:地元の人が場所を説明するとき
地元に根付いた言葉なので、場所の目印として使われることもありました。



あそこの交差点、昔はやっちゃばのそばだったんだよ。にぎやかだったよなあ。



そんな歴史があったんですね。今は面影もないですけど……。
使い方③:業界の話をするとき
市場関係者や料理人の間では、今でも「やっちゃば」という言葉が使われることがあります。



この季節になるとやっちゃばに新鮮な葉物が一気に出回るんです。



プロの方はやっぱり「やっちゃば」って言うんですね。かっこいい。
「やっちゃば」の類義語・対義語
類義語
青物市場(あおものいちば)
「青物市場」は「やっちゃば」の標準的な言い方で、野菜や青果を扱う市場全般を指します。現代ではこちらの呼び方が一般的です。似た意味の言葉として「青果市場(せいかいちば)」もあります。関西では「やおや市場」などとも呼ばれることがありますが、「やっちゃば」という呼び方は関東・江戸特有の表現です。



「青物市場」が一般的な言い方なんですね。「やっちゃば」の方が味があると思いますけど。
対義語
「やっちゃば」に明確な対義語はありません。強いて挙げるなら、青物(野菜)を扱うやっちゃばに対して、魚介を扱う「魚市場(うおいちば)」や「魚河岸(うおがし)」が対をなす存在といえるかもしれません。
「やっちゃば」の豆知識・ちょっといい話
「やっちゃば」にまつわる、知っておくと少し面白い話を紹介します。
豆知識①:現在の「やっちゃば」は大田区にある
かつての神田・千住・駒込のやっちゃばは、現在では東京都中央卸売市場大田市場(大田区)に統合されています。大田市場は1990年に開場した日本最大規模の青果卸売市場で、全国から集まった野菜・果物が毎日競りにかけられています。江戸の「やっちゃば」の精神は、場所を変えながら今も受け継がれているといえます。



大田市場が現代のやっちゃばなんですね。江戸から続く市場の系譜、ロマンがあります。
豆知識②:「やっちゃば言葉」という独自の業界語があった
やっちゃばでは、外部の人に値段や取引内容を分からなくするための「やっちゃば言葉(隠語)」が使われていたとされています。数字を逆さに読んだり、独自の符丁(ふちょう)を使ったりするもので、競りの現場に根づいた独自の文化でした。こうした業界隠語は市場が近代化されるとともに使われなくなりましたが、江戸の商人文化の一端を伝える興味深い習慣です。



隠語まであったとは……。市場って独自の世界があるんですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。「やっちゃば」は江戸の活気ある市場で生まれ、400年以上の歴史を持つ東京の方言です。青物市場の意味を知ったうえで、千住・神田・駒込の市場の歴史や現代の大田市場まで思いを巡らせると、東京の食文化がより身近に感じられるかもしれません。