「ちんくしゃ」の意味は?犬の「狆」に由来する語源と夏目漱石の関係

当サイトのコンテンツには広告が含まれています

今回は「ちんくしゃ」という方言について解説します。

ちんくしゃ=狆(犬)がくしゃみをしたように目鼻が中央に集まったくしゃっとした顔・不美人の形容

ちんくしゃって聞いたことあるけど、どこの言葉なんだろう?

主に全国(昭和頃まで広く使われた言葉)で使われる方言です。

この記事では意味・どこの方言か・由来・使い方・類義語まで深掘りしています。興味がある方は記事の続きへどうぞ。

目次

「ちんくしゃ」とは?意味は「くしゃっとした顔」

「ちんくしゃ」の意味=狆(犬)がくしゃみをしたように目鼻が中央に集まったくしゃっとした顔・不美人の形容

「ちんくしゃ」とは、目・鼻・口が顔の中央にぎゅっと寄り集まり、くしゃくしゃとつぶれたような顔立ちを表す言葉です。

標準語にすると「不美人」「ぶす」などにあたりますが、直接的でなくユーモアのある言い回しとして使われていました。不美人全般を指すだけでなく、特に「顔のパーツが中央に集まった、つぶれたような顔」という具体的なイメージが込められています。

昭和頃には幅広い世代が使う一般的な言葉でしたが、現在は主に年配の方の言葉として聞かれます。

「ちんくしゃ」って、意外と具体的な顔立ちを表した言葉なんですね。

「ちんくしゃ」はどこの方言?

ちんくしゃ=主に全国(昭和頃まで広く使われた言葉)の方言

「ちんくしゃ」は特定の地域に限らず、昭和頃まで日本全国で広く使われていた言葉です。

地方によって「ちんくしゃな顔」「ちんくしゃみたいな顔」など、使われ方に多少の差はありますが、意味はおおむね共通しています。特定の方言として育った言葉ではなく、全国で通じた俗語・慣用語に近い言葉です。

現在の若い世代にはあまり馴染みがない言葉ですが、年配の方と話す際に耳にすることがあります。「ちんくしゃ」という言葉を知っておくと、昭和の言葉づかいへの理解が深まります。

昭和の頃は特定の地域でなく全国で使われていたんですね。今では少し懐かしい言葉ですね。

「ちんくしゃ」の由来・語源

「ちんくしゃ」の語源には諸説ありますが、主に3つの見方が知られています。順に見ていきましょう。

語源①:「狆(ちん)+くしゃ(くしゃみ)」由来説(定説)

有力説=「狆(ちん)という犬がくしゃみをしたような顔」からきた表現とされる

「ちんくしゃ」の「ちん」は犬の一種「狆(ちん)」を、「くしゃ」は「くしゃみ」を指すという説が最も広く知られています。

狆は鼻が低くて顔が平べったく、目・鼻・口が顔の中央にぎゅっと集まっているのが特徴の小型犬です。その狆がくしゃみをするときに顔をくしゃっとさせた様子を、人の顔立ちに例えたのが「ちんくしゃ」の始まりとされています。「狆がくしゃみをしたような顔」という表現が定着したものと考えられています。

犬の顔を人の顔立ちに例えるとは、昔の人はユーモアがありますね。

語源②:「狆」は江戸時代の宮廷・武家に愛された日本原産の犬

狆(ちん)=顔が平べったく目・鼻・口が中央に集まった日本原産の小型犬。宮廷・武家で愛された犬種

「狆(ちん)」は日本原産の小型犬で、江戸時代には宮廷や武家の間で特に愛された犬種です。

その顔立ちは独特で、鼻が低くて顔が平べったく、目・鼻・口が顔の中央に集まっています。この「中央にぎゅっと寄った顔」が「ちんくしゃ」という言葉の視覚的なイメージの源です。身近に飼われた愛犬のしぐさから言葉が生まれたと考えると、親しみが感じられます。

武家のお屋敷で愛されていた犬が語源になっているとは、なんとも雅な由来ですね。

語源③:夏目漱石「吾輩は猫である」との関係

夏目漱石「吾輩は猫である」の主人の名「珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)」は「ちんくしゃ」に由来するという説がある

夏目漱石の代表作「吾輩は猫である」に登場する猫の飼い主「珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)」先生。この名前が「ちんくしゃ」から来ているという説があります。

「珍野(ちんの)+苦沙弥(くしゃみ)」で「ちんのくしゃみ」と読み、「ちん+くしゃ」から来ているという見方です。漱石自身がモデルとも言われており、自らに「ちんくしゃ(くしゃっとした顔の人)」を重ねてユーモアを込めたとも考えられています。これは明治末から昭和にかけて「ちんくしゃ」が広く知られた言葉だったことを示しています。

あの名作にもちんくしゃが隠れていたとは、文学って深いですね。

「ちんくしゃ」の使い方・例文

「ちんくしゃ」を使った会話例を見ていきましょう。

昭和の日常会話でよく使われたシーンを中心に取り上げます。

使用例① 顔立ちについて話す場面

年配の親族が昔の写真を見ながら、顔立ちについてあれこれ話す場面です。

この子、昔はちんくしゃな顔してたね。今はすっかりよくなったけど。

(ちんくしゃって何だろう)どういう意味ですか?

顔のパーツがぐっと中央に寄ってる感じのこと。狆ってお犬さんに似た顔のことだよ。

使用例② 自分の顔をからかって話す場面

友人同士でユーモアを交えながら自分の顔立ちを話す、昭和らしい場面です。

私なんてもうちんくしゃで、写真撮られるのが苦手でさ。

そんなことないですよ。人の顔立ちは気にするものじゃないですよ。

使用例③ 物がくしゃっとした様子に使う場面

顔以外にも、紙や布などがくしゃくしゃになった状態に使うことがある場面です。

あ、手紙がちんくしゃになってしまった。鞄の中で潰れたんかな。

顔だけじゃなくて、物がくしゃっとなった様子にも使えるんですね。

「ちんくしゃ」の類義語・対義語

「ちんくしゃ」に近い言葉と、反対の意味にあたる言葉を見ていきましょう。

「ちんくしゃ」の類義語

「ちんくしゃ」に近い標準語や、似た意味を持つ言葉には下記のものがあります。

不美人・ぶす(標準語)

「ちんくしゃ」と同じく不美人を指す言葉ですが、「ちんくしゃ」のほうが「顔のパーツが中央に集まっている」という具体的なイメージが含まれる点で異なります。直接的な「ぶす」に比べてユーモアがあるとも言えます。

くしゃくしゃ顔・つぶれた顔(俗語)

顔のパーツが中央に寄り、つぶれたような顔立ちを表す俗語的な表現です。「ちんくしゃ」のイメージに近い現代語の言い換えとして使えます。

べちゃくちゃ・ひしゃげた顔(各地の俗語)

「べちゃくちゃ」は顔が平べったくつぶれた様子を指す俗語で、地域によっては「ちんくしゃ」に近い感覚で使われました。「ひしゃげた顔」も同様に、顔立ちがつぶれている状態を表します。

「ちんくしゃ」は直接的すぎず、ユーモアがある言い方なんですね。昭和らしい感じがします。

「ちんくしゃ」の対義語

「ちんくしゃ」の明確な対義語はありません。

強いて言えば「彫りの深い顔」「きりっとした顔立ち」など、パーツが整って広がりのある顔立ちを表す言葉が反対の意味に近いと言えます。

対義語は特にないんですね。顔立ちを褒める言葉はたくさんあるので、場面で選べばよさそうです。

「ちんくしゃ」の豆知識・ちょっといい話

「ちんくしゃ」をもっと深く知れる、ちょっとした小話を紹介します。

夏目漱石が自分の名に「ちんくしゃ」を忍ばせた

「吾輩は猫である」の主人公の飼い主「珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)」という名は、「ちんくしゃ」から来ているという説があります。

漱石は外見にコンプレックスがあったとも伝えられており、モデルとなった自分自身に「ちんくしゃ」を重ねてユーモアを込めたとも考えられています。ただし確証はなく、あくまで一説です。明治末に書かれた作品に「ちんくしゃ」由来と見られる名前が登場することは、当時この言葉が広く通じていたことを示しています。

文豪がこっそり自分の顔をネタにしていたかもしれないとは、なんだか親近感がわきます。

「狆(ちん)」はくしゃっとした顔が愛されポイント

「ちんくしゃ」の語源となった犬「狆(ちん)」は、そのくしゃっとした顔立ちが愛される日本原産の小型犬です。

現代ではフレンチブルドッグやパグなど鼻ぺちゃ系の犬が人気ですが、狆はその日本版とも言える犬種です。「ちんくしゃ」が不美人の形容として使われたのに対して、元ネタの狆は今も愛される犬種という逆転が面白いところです。言葉の由来をたどると、顔立ちに対する時代の美意識が見えてきます。

人間では不美人の形容なのに、犬のほうは愛されているというのが面白いですね。

明日から使えるプチ知識:年配の方と話していて「ちんくしゃ」という言葉が出てきたら、「狆(犬)がくしゃみをしたような顔」つまり「目鼻が中央に集まったくしゃっとした顔立ち」のことを指しています。夏目漱石「吾輩は猫である」の「珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)」とも関係がある昭和の言葉として知っておくと、会話の幅が広がります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。「ちんくしゃ」は犬の「狆」がくしゃみをしたような顔立ちを表す昭和の言葉で、夏目漱石の名作とも縁がある面白い語源を持っています。意味と由来を知ると、この言葉がぐっと身近に感じられるはずです。

目次