今回は「べらぼう」という方言について解説します。
「べらぼう」とは、程度がはなはだしいことや、ばか者をののしるときに使う江戸言葉です。

「べらぼうに高い」「べらぼうめ」のように使う、江戸っ子らしい言葉ですね。
主に江戸(東京)で使われ、巻き舌で荒っぽい「べらんめえ調」の代表のような言葉です。
この記事では意味・どこの方言か・由来・使い方・類義語まで深掘りしています。
興味がある方は記事の続きへどうぞ。
べらぼうとは?意味は「はなはだしい・ばか者」
「べらぼう」の意味=①程度がはなはだしいこと ②ばか者・愚か者をののしる語
べらぼうには大きく二つの意味があり、一つは「並はずれて程度がはなはだしい」、もう一つは「ばか者をののしる」という使い方です。
一つ目は「べらぼうに高い」「べらぼうな値段」のように、桁外れで常識をこえた様子を表します。
二つ目は「べらぼうめ」のように、相手をばか者・たわけ者となじる場面で使われます。
同じ言葉で「程度」と「ののしり」の両方を表すのが、べらぼうのおもしろいところです。



「すごい」と「ばか者」、どちらも常識をこえている点で根っこはつながっているんですね。
べらぼうはどこの方言?
べらぼう=主に江戸(今の東京)で使われた江戸言葉
べらぼうは江戸時代の町人が使った江戸言葉で、巻き舌で勢いのある「べらんめえ調」を代表する言葉です。
べらんめえ調は職人など、いわゆる江戸っ子の荒っぽい話し方として知られています。
客商売の人はていねいさに欠けるとして使わなかったとも言われ、もとは職人言葉の色合いが濃い言葉でした。
今では「べらぼうに高い」のように、程度を表す言い方が全国でも通じます。



時代劇の江戸っ子が威勢よくしゃべる、あの口調のイメージですね。
べらぼうの由来・語源
べらぼうの語源には諸説ありますが、有力とされる説を中心に見ていきましょう。
語源①:見世物の奇人「便乱坊」に由来する説
有力説=江戸前期の見世物小屋で評判になった奇人「便乱坊(べらんぼう)/可坊」が語源
寛文年間(1661〜1673年)の末ごろ、見世物小屋で人気を集めた奇人「便乱坊」が語源とする説が有力とされています。
この奇人は全身が黒く、頭がとがり、目は赤くて丸く、あごが猿に似ていたと伝えられています。
愚かなしぐさで客を笑わせたことから、ばかにする意味で「べらぼう」と呼ばれるようになったと言われます。



本物の見世物の芸人さんの名前から生まれた言葉だったんですね。
語源②:「篦棒(へら棒)」からきたとする説
別説=穀物をつぶす「篦棒(へら棒)」から「穀潰し」を表したとする説
もう一つの説では、穀物をつぶす道具「篦棒(へら棒)」がなまり、「穀潰し(ごくつぶし)」の意味になったとされます。
役立たずをののしる気持ちから、ばか者の意味へつながったという見方です。
どちらが正しいかは断定できず、現在も諸説あるとされています。



由来がはっきり一つに決まらないのも、古い言葉らしいところですね。
「篦棒」は当て字で、いつごろから使われたか
「篦棒」「便乱坊」「可坊」はいずれも音にあてた当て字
「篦棒(箆棒)」という漢字は意味から当てたものではなく、べらぼうという音にあてた当て字です。
「便乱坊」「可坊」も同じく音をあてた書き方で、決まった一つの正しい漢字があるわけではありません。
江戸前期の寛文ごろにはすでに使われ、はじめは「ばか者」をののしる意味で広まったと考えられています。
そこから「常識をこえた」という気持ちが転じて、「程度がはなはだしい」意味も持つようになりました。



もともとは「ばか者」、そこから「桁外れ」へ意味が広がったんですね。
べらぼうの使い方・例文
べらぼうを使った会話を見ていきましょう。
程度を強める使い方と、ののしる使い方の両方があります。
使用例① 値段の高さにおどろく
程度がはなはだしいことを表す、いちばん使いやすい場面です。



この刺身、べらぼうに高いじゃねえか。



「べらぼうに高い」で「とんでもなく高い」という意味になりますね。
使用例② あきれて相手をなじる
ばか者・たわけ者とののしる、勢いのある場面です。



てやんでい、このべらぼうめ!



「べらぼうめ」は「このばか者め」と相手をなじる言い方ですね。
使用例③ ものの多さや忙しさを表す
数や量が桁外れであることを表す場面です。



今日はべらぼうに忙しくて、息つくひまもなかったよ。



「べらぼうに忙しい」で「とてつもなく忙しい」という強い言い方になります。
べらぼうの類義語や対義語
べらぼうの類義語と対義語についても見ていきましょう。
べらぼうの類義語
「はなはだしい」意味と「ばか者」意味で、それぞれ似た言葉があります。
ものすごい/とんでもない(程度がはなはだしい意味)
「べらぼうに高い」は「ものすごく高い」「とんでもなく高い」と言いかえられます。



程度を強める言葉としては、これが標準語に近い言いかえですね。
たわけ/あほう(ばか者をののしる意味)
「べらぼうめ」は「たわけ者」「あほう」と同じく、相手をののしる言葉です。
「たわけ」は中部地方、「あほう」は関西で多く使われ、地域ごとの色があります。



江戸の「べらぼうめ」、関西の「あほう」と、地域で言い方が変わりますね。
べらぼうの対義語
べらぼうの対義語としては下記が挙げられます。
並(なみ)/ふつう
桁外れを表すべらぼうに対し、ありふれた程度を表す「並」「ふつう」が反対の意味になります。



「べらぼうに高い」の逆は「ふつうの値段」というイメージですね。
「ばか者」の意味については、ぴたりと当てはまる一語の対義語はありません。
べらぼうの豆知識・ちょっといい話
べらぼうをもっと深く知れる、ちょっとした小話を紹介します。
「べらんめえ」は「べらぼうめ」がくずれた言い方
江戸っ子の代名詞「べらんめえ」は、「べらぼうめ」が発音のうちにくずれてできた言い方とされています。
「てやんでい、べらんめえ」とまくし立てる威勢のよい話し方は「べらんめえ調」と呼ばれ、江戸っ子らしさの象徴になりました。もとは相手をののしる「べらぼうめ」だったと知ると、あの勢いにも納得がいきます。



あの威勢のいい江戸弁の元も、べらぼうだったんだね。
2025年の大河ドラマ名にもなった「べらぼう」
2025年のNHK大河ドラマは「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で、この江戸言葉がそのまま題名になりました。
2025年1月5日にスタートした作で、横浜流星さんが主人公の版元・蔦屋重三郎を演じています。喜多川歌麿や東洲斎写楽を世に出した蔦重の、常識をこえた生き方を「べらぼう」の一語に重ねた題名です。



桁外れな生き方を「べらぼう」と表すなんて、ぴったりの題名だね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。意味と地域がわかると、時代劇や大河ドラマの「べらぼう」がぐっと身近に感じられます。