今回は「はぶてる」という方言について解説します。
「はぶてる」とは、すねる、ふてくされる、腹を立てて不機嫌になるさまを表す方言です。

子どもが口をとがらせて、ぷいっとそっぽを向く、あの感じにぴったりの言葉なんですよ。
主に広島県を中心とした中国地方で使われます。
この記事では「はぶてる」の意味やどこの方言か、由来・語源、使い方、類義語まで深掘りしています。
興味がある方は記事の続きへどうぞ。
はぶてるとは?意味は「すねる・ふてくされる」
「はぶてる」の意味=すねて、ふてくされて、不機嫌になるさま
はぶてるは、思いどおりにならずに腹を立て、ふくれっ面でいじけてしまう様子を表す言葉です。
子どもが駄々をこねてすねるときにも、大人が機嫌をそこねて黙りこむときにも使えます。
標準語で言えば「すねる」「ふてくされる」「いじける」が近く、場面によって使い分けて訳すことになります。
怒って声を荒らげるというより、ぷりぷりと不満をためて黙りこむような、かわいげのある不機嫌さを言い表せるのが、この言葉の便利なところです。



標準語の「すねる」よりも、もう少し感情がこもった響きに聞こえますね。
はぶてるはどこの方言?
はぶてる=広島弁を代表に、中国地方から北九州まで広く使われる方言
はぶてるは広島弁の代表的な言葉として知られ、島根・山口・福岡など、中国地方から北九州にかけて広い範囲で使われます。
広島では日常の会話にごく自然に登場し、子どもからお年寄りまで世代を問わず通じます。
地域によっては「はぶ」と略したり、語尾を変えて使ったりすることもあります。
関東より東ではほとんど通じず、西日本らしい言い回しの一つとして取り上げられることが多くあります。



広島出身の方が上京して、通じずに驚く言葉の一つだそうです。
はぶてるの由来・語源
はぶてるの語源には諸説あります。有力とされる説を見ていきましょう。
語源:「羽太る(はぶとる)」から来た説
有力説=鳥が羽を膨らませる「羽太る(はぶとる)」から来たという説
はぶてるは、羽を膨らませる「羽太る(はぶとる)」がもとになったとされています。
ふくらんだ羽と、ふくれっ面でぷりぷりしている様子が重なり、「不機嫌で膨れている」という意味につながったと考えられています。
「はぶとる」が時を経て発音が変わり、「はぶてる」になったという流れです。



ふくれっ面を、ふくらんだ羽に見立てるとは、なんともかわいらしい発想ですね。
鶏が羽を膨らませる様子との結びつき
イメージのもと=鶏が雛を守るときに羽を膨らませる姿
「羽太る」は、鶏が雛(ひな)を守るときに羽を膨らませる姿から来た言葉だとされています。
羽をぷくっとふくらませて身構える鶏の姿と、頬をふくらませて怒っている人の様子が、よく似ているというわけです。
身近な鳥の動きから感情を表す言葉が生まれたと考えると、方言の成り立ちのおもしろさが感じられます。



言われてみれば、ふくれっ面とふくらんだ羽って、たしかにそっくりだね。
響きと意味のギャップについて
「はぶてる」という音はやわらかく、どこか愛嬌がありますが、意味は「不機嫌・すねる」とやや辛口です。
この響きと意味のギャップが、地元の人にも他地域の人にも親しまれる理由の一つだと言われています。



音だけ聞くと、怒っているようには思えんよなあ。
はぶてるの使い方・例文
「はぶてる」を使った会話を見ていきましょう。
広島弁の語尾「〜けぇ」「〜なや」と組み合わせると、より自然な言い回しになります。
使用例① 子どもがはぶてる(子どもがすねる)
おやつをもらえず、子どもがふくれっ面になっている場面です。



もう知らん、はぶてるもん。



そがぁにはぶてんなや(そんなにすねないでよ)。あとで一緒に食べようね。
使用例② 友人がはぶてる(友人が不機嫌になる)
約束を忘れていて、友人がへそを曲げてしまった場面です。



約束しとったのに忘れるけぇ、もうはぶてるわ。



ごめんごめん、はぶてんさんなや(すねないでよ)。今度ちゃんと埋め合わせするけぇ。
使用例③ 同僚がはぶてる(職場でふてくされる)
意見が通らず、同僚がむすっと黙りこんでしまった場面です。



あの子、提案が通らんかったけぇ、ずっとはぶてとるんよ。



そうなんですね。少し落ち着いたころに、声をかけてみましょうか。
はぶてるの類義語や対義語
はぶてるの類義語と対義語についても見ていきましょう。
はぶてるの類義語
はぶてるに近い標準語や、似た意味の言葉には下記のものがあります。
すねる(標準語)
すねるは、思うようにならず、不満を態度に表す様子を指す言葉です。子どもがはぶてる場面に、もっとも近い言い方です。



「すぐすねる子だね」のように使えますね。
ふてくされる・いじける(標準語)
不満をためて投げやりな態度をとったり、いじけて黙りこんだりする様子を表します。大人がはぶてる場面に近い言い方です。



場面によって近い標準語が変わるのが、方言らしいところです。
つむじを曲げる(標準語の慣用句)
つむじを曲げるは、機嫌をそこねてわざと逆らうような態度をとることです。へそを曲げてはぶてる様子と意味が重なります。



「つむじを曲げて返事もしない」のように使われます。
はぶてるの対義語
はぶてるには、ぴったり当てはまる対義語はありません。
あえて言えば「機嫌を直す」「ご機嫌」「にこにこする」が、すねている状態とは反対の様子にあたります。



「もうはぶてるのはやめて、にこにこしようね」と言えば、機嫌を直してほしいという意味になりますよ。
はぶてるの豆知識・ちょっといい話
はぶてるをもっと深く知れる、ちょっとした小話を紹介します。
語源は鶏のふくらんだ羽だった
はぶてるの語源とされる「羽太る」は、鶏が羽を膨らませる様子から来ているとされます。
ふくれっ面と、ふくらんだ羽が同じイメージでつながっているのは、言葉のおもしろさを感じさせます。怒っている人を見て、ふくらんだ鶏を思い浮かべると、少しほほえましく感じられるかもしれません。



感情を身近な鳥にたとえる発想が、なんともすてきですね。
広い範囲で通じる西日本の言葉
はぶてるは広島だけでなく、島根・山口・北九州など、広い範囲で通じる言葉です。
県境をまたいで通じるため、地元では方言だと気づかずに使っている人も少なくありません。西日本を旅したとき、思いがけない場所で耳にすることもあります。



方言って、こんなに広い範囲で通じることもあるんだね。
喜怒哀楽の会話によく登場する
はぶてるは、広島カープの応援をはじめ、喜怒哀楽のこもった会話によく登場する言葉です。
試合に負けて「はぶてるわ」と言いながらも、どこか愛嬌のある響きになるのは、この言葉らしい持ち味です。感情をやわらかく伝えられる点が、地元で長く愛される理由です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。広島や中国地方で「はぶてる」と耳にしたら、すねて不機嫌になっている様子を表しているのだと思い出してみてください。