今回は「きときと」という方言について解説します。
「きときと」とは、新鮮で活きがよく、ピチピチしている様子を表す方言です。

獲れたての魚が、まだ元気に跳ねているようなイメージにぴったりの言葉なんですよ。
主に富山県で使われます。
この記事では「きときと」の意味やどこの方言か、由来・語源、使い方、類義語まで深掘りしています。
興味がある方は記事の続きへどうぞ。
きときととは?意味は「新鮮・活きがいい」
「きときと」の意味=新鮮で活きがよく、ピチピチして元気のいいさま
きときとは、とくに魚介について、獲れたてで活きのいい状態を表す言葉です。
水揚げされたばかりで、まだピチピチと跳ねているような新鮮さを言い表します。
標準語にすると「新鮮」「活きがいい」「ピチピチ」あたりが近く、場面に合わせて使い分けて訳すことになります。
もとは魚に使う言葉ですが、活き活きとした元気な様子を広く指して使われることもあります。



富山では、鮮度のよさをほめるときの定番の言葉として親しまれています。
きときとはどこの方言?
きときと=主に富山県を中心とした北陸地方の方言
きときとは富山県を代表する方言で、となりの石川県など北陸地方でも使われます。
富山湾という豊かな漁場をもつ土地がら、魚の鮮度を表すこの言葉が根づいたと考えられています。
文字にするときは「きときと」のほか「キトキト」と書かれることもあり、表記にゆれがあります。
北陸より外ではあまり通じませんが、近年は観光や特産品のPRを通じて、富山らしい言葉として全国に知られつつあります。



富山の方が県外で「きときと」と言うと、首をかしげられることもあるそうです。
きときとの由来・語源
きときとの語源には諸説あります。代表的な説を順に見ていきましょう。
語源①:「輝く・生き生き」から来た説
有力説=古い擬態の言葉「きときと」が「輝く・生き生きしている」を表し、そこから「新鮮」へ広がったとする説
きらきらと輝き、生き生きとしている様子を「きときと」と表したのが始まりとする見方です。
獲れたての魚は身が締まり、つやがあって光って見えます。その輝きと元気のよさが結びついて、「新鮮」の意味へ広がったと考えられています。



「輝く」が元だと思うと、新鮮な魚のつやがそのまま言葉になったようですね。
語源②:「ききち」が変化した説
別説=「活気がある・元気な」を表す富山の方言「ききち」が変化したとする説
富山で「活気がある・元気な」という意味を表した「ききち」が、形を変えて「きときと」になったとする見方もあります。
元気で活気のある様子という点では、輝きから広がったとする説とも意味が重なります。
どちらの説も確かな結論はなく、諸説あるというのが実情です。



どの説も「元気で生き生きしている」という感覚でつながっていますね。
きときとの使い方・例文
「きときと」を使った会話を見ていきましょう。
富山弁の語尾「〜やちゃ」「〜ね」と合わせて使われることが多くあります。
使用例① 魚屋できときとの魚をすすめる
店先で、今朝あがったばかりの魚をすすめる場面です。



今日はきときとの魚やちゃ、買うていかんけ。



(新鮮な魚なのね)わあ、つやつやしてる。これください。
使用例② 食卓で刺身の鮮度をほめる
家の食卓で、出された刺身の新鮮さに感心する場面です。



この刺身、きときとやね。コリコリしておいしい。



(活きがいいのね)朝とれたばかりだから、味がちがうでしょう。
使用例③ 市場で鮮度をたずねる
市場で、目当ての魚が新鮮かどうかをたずねる場面です。



このホタルイカ、きときとですか。



(鮮度を気にしているのですね)もちろんきときとやちゃ、今朝あがったばかりやよ。
きときとの類義語や対義語
きときとの類義語と対義語についても見ていきましょう。
きときとの類義語
きときとに近い標準語には下記のものがあります。
新鮮(標準語)
新鮮は、とれたてで古びていない様子を表す言葉です。魚や野菜の鮮度をいう「きときと」に、もっとも近い言い方です。



「新鮮な魚」と言いかえれば、ほぼそのまま伝わりますね。
活きがいい・ピチピチ(標準語)
活きがいい、ピチピチは、魚などが元気で勢いのある様子を表す言葉です。獲れたてで跳ねているような「きときと」の元気のよさに近くなります。



「活きのいい魚」「ピチピチの魚」と言えば、勢いまで伝わります。
いきいき(標準語)
いきいきは、生命力にあふれて元気な様子を表す言葉です。魚にかぎらず、活気のある「きときと」の使い方に重なります。



「いきいきとした目の魚」のように、元気のよさを表せます。
きときとの対義語
きときとの反対の意味にあたる言葉も見ておきましょう。
「古い」「しなびた」「鮮度が落ちた」が、新鮮さを失った状態を表す反対の言い方になります。



「この魚、もう古いね」と言えば、きときとの反対の状態になりますね。
きときとの豆知識・ちょっといい話
きときとをもっと深く知れる、ちょっとした小話を紹介します。
富山空港の愛称は「富山きときと空港」
富山空港には「富山きときと空港」という愛称がつけられています。
新鮮さや元気のよさを表すこの方言は、富山のイメージにぴったり合う言葉です。空の玄関口の名前に選ばれるほど、地元で愛されていることがうかがえます。



空港の名前になっている方言は、なかなかめずらしいですね。
富山湾の名産PRでおなじみ
きときとは、寒ブリ・白エビ・ホタルイカといった富山湾の名産の鮮度をアピールする言葉としてよく使われます。
「きときとの白エビ」「きときとの寒ブリ」のように、観光や物産のキャッチフレーズとして親しまれています。富山湾は「天然のいけす」とも呼ばれ、鮮度のよさが大きな魅力です。



名産と組み合わせると、おいしそうな響きがぐっと増すね。
漁の言葉から観光の言葉へ
もとは漁業の現場で魚に使う言葉でしたが、日常で使う人は減り、今は観光や特産品のキャッチフレーズとして再び活用されています。
暮らしの中での出番は少なくなった一方で、富山らしさを伝える看板の言葉として新しい役割を得ました。方言が形を変えながら生き続けている、よい例といえます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。富山で「きときと」と耳にしたら、獲れたての新鮮さや元気のよさを表しているのだと思い出してみてください。