今回は「やっとかめ」という方言について解説します。
「やっとかめ」とは、久しぶり・お久しぶりですという意味で使われる愛知県(名古屋)の方言です。

あ、田中さん!やっとかめだね!
主に愛知県の名古屋・尾張地方を中心に使われており、隣接する三重・岐阜でも聞かれる言葉です。
この記事では意味・どこの方言か・由来・使い方・類義語まで深掘りしています。興味がある方は記事の続きへどうぞ。
「やっとかめ」とは?意味は「久しぶり」
「やっとかめ」の意味=久しぶり・お久しぶりです(再会の挨拶)
「やっとかめ」は、しばらく会っていなかった人に対して使う再会の挨拶言葉です。標準語でいう「お久しぶりですね」「久しぶり」にあたります。
かつては名古屋を中心に日常的に使われていましたが、現在では使う人が少なくなり、若い世代には通じないこともあります。一方で名古屋の文化・芸能イベントのシンボル的な言葉として、地域のアイデンティティとして大切にされています。



「やっとかめ」が「久しぶり」の意味だとは知りませんでした。名古屋らしい響きですね。
「やっとかめ」はどこの方言?
「やっとかめ」=主に愛知県(名古屋・尾張地方)の方言
「やっとかめ」は愛知県の名古屋・尾張地方を中心とした方言で、東海地方(三重・岐阜・愛知)にまたがって使われてきました。
かつては日常的に使われていた言葉ですが、現代では名古屋の人に言っても通じないケースも増えています。「方言だと知っていても自分では使わない」という人が多く、世代によって認知度に差があります。全国的な知名度は高い一方で、実際の使用者は限られているのが現状です。



名古屋生まれでも、祖父母世代から聞いたことがあるくらいで、自分では使わないという人が多いようです。
「やっとかめ」の由来・語源
語源①:「八十日目(やそかめ)」説――有名だが諸説あり
「やっとかめ」の語源として最も広く知られているのが、「八十日目(やそかめ)」という説です。昔から「人のうわさも七十五日」ということわざがありますが、その噂が消え去るよりさらに5日長い80日ぶり=それほど久しく会っていなかった、という洒落た表現という解釈です。
ただし、この「八十日目」説については学術的な調査で「当て字や俗説の可能性が高い」という指摘もあります。名古屋市図書館の調査によると、「八十」と「〇日目」はそれぞれ「やっと」「かめ」に由来するという確かな根拠は見当たらないとされており、諸説あることを念頭に置く必要があります。



「八十日目」って漢字で書くとおもしろい!でも俗説かもしれないとは、なんとも奥が深い言葉ですね。
語源②:「やっと(長い間)」+「かめ」という説が有力
方言研究の上では、「やっと(長い間・ずっと)」という意味の東海方言と組み合わさった表現という説が有力とされています。愛知・三河弁では「やあっと」が「長いこと・ずっと」を意味し、「やっとかめ=長い間あなたに会えていなかった」という自然な意味の流れが読み取れます。
また「約十日(やくとおか)」が訛って「やっとかめ」になったという説も一部で伝わっていますが、こちらも確認されていない俗説とされています。現時点では「やっと(長いこと)」から来ているという説が最も説得力を持っています。



「やっと」が「長い間」という意味だったとは。東海地方に根ざした言い回しが感じられますね。
語源③:文献への登場は明治時代から
「やっとかめ」が文献に現れるのは明治二十年代以降のことで、江戸時代の資料には確認されていません。いつ頃生まれた言葉なのかは現在も明確ではありませんが、少なくとも明治中期には名古屋周辺で広く使われていたことがわかっています。



江戸時代には記録がないとなると、意外と新しい言葉なのかもしれませんね。
「やっとかめ」の使い方・例文
「やっとかめ」は主に久しぶりに会った相手への挨拶として使います。現代では高齢の方や方言愛好家が使う場面が多く見られます。会話での使い方を例文で確認しましょう。
使用例① 久しぶりの再会で
旧友にばったり出会ったときの挨拶として使われます。



あら、鈴木さん!やっとかめですね。お元気でしたか?



ほんとやっとかめだなも。もう半年は経ちましたかね。
使用例② 電話での挨拶に
電話や手紙でも久しぶりの連絡を取るときに使えます。



もしもし、おばあちゃん?やっとかめ。このあいだ名古屋に来てたんだって?



やっとかめやね。会いたかったよ。今度はゆっくりしておいで。
使用例③ 「なも」と合わせて名古屋らしく
名古屋弁の語尾「なも(〜ですね・〜ですよ)」と組み合わせると、より地元らしい表現になります。



やっとかめだなも。この店、何年ぶりに来たかな。



ほんとやっとかめ。昔よく来たよね、ここ。
「やっとかめ」の類義語・対義語
「やっとかめ」の類義語
久しぶり・お久しぶりです・久方ぶり・ご無沙汰しております
標準語での言い換えとして「久しぶり」「お久しぶりです」が対応します。改まった場面では「ご無沙汰しております」を使います。「久方ぶり」はやや文語的で手紙などに向く表現です。
他地域の似た方言には、東北の「まんずまんず(まあまあ、久しぶり的なニュアンス)」や、関西でよく聞く「もうけっこう会うてへんな(もうずいぶん会っていませんね)」などがあります。



地域によって「久しぶり」の表し方もさまざまですね。
「やっとかめ」の対義語
「久しぶり」の反対にあたる「最近よく会う・しょっちゅう会う」を意味する明確な対義語は方言としてはありません。標準語では「しょっちゅう」「頻繁に」などが対義的な意味を持ちます。
「やっとかめ」の豆知識・ちょっといい話
「やっとかめ」は現代では使われる機会が減りつつあるようで、名古屋の人でも若い世代には通じないことがあります。しかし、この言葉を冠した文化イベントが生まれるなど、むしろ地域のシンボルとして再評価される動きがあります。
秋の名古屋を彩る「やっとかめ文化祭DOORS」
2013年から毎年秋に開催されている「やっとかめ文化祭DOORS」は、名古屋の伝統芸能・まち歩き・和菓子を楽しむ文化イベントです。街角での芸能披露「まちなか芸披露」や、まちを教科書にする「旅するなごや学」など、尾張・名古屋の文化を体感できる企画が目白押しで、2023年以降は「DOORS(扉)」という副題が加わりました。名古屋の芸能文化300年の蓄積を伝えるイベントとして、地元から親しまれています。



方言の言葉がお祭りの名前になるなんて、名古屋の人たちが「やっとかめ」をいかに大切にしているかが伝わりますね。
「やっとかめ探偵団」でドラマにも登場
2010年には東海テレビ制作で「名古屋やっとかめ探偵団」というスペシャルドラマが放送されました。名古屋を舞台に個性豊かなおばあちゃん探偵たちが活躍するユニークな内容で、名古屋弁の温かみが全編に漂う作品です。名古屋の街並みや文化が随所に描かれており、「やっとかめ」という言葉を広く知らしめる一つのきっかけにもなりました。



名古屋の方言が主役のドラマとは面白い。「やっとかめ」が題名になるだけで名古屋感が出ますね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。「やっとかめ」という言葉の意味と背景を知ることで、名古屋・尾張の文化をより身近に感じていただければ幸いです。